藤井風氏のグルーヴ感について

 藤井風、めっちゃハマったパンパレことパンのパレードです。

 これからパンパレが持つ限りの知識と視点で藤井風さんのすごさを部分的に語ります。

 配信で喋ったほうが、みんなの理解度を確認できるけれども、話したこと忘れてしまうので「自分の考えたことメモ」として残します。専門機関で学んだ者ではないので、間違った点などありましても知りません。これからの文章は全部語尾に「知らんけど」がつくと思ってください。

 

Ⅰ.はじめに

Ⅱ.藤井風のすごいと思うところ①グルーヴ感

   1.ゴーストノート

   2.入りのタイミング

   3.切り方のバリエーション

Ⅲ.終わりに

 

Ⅰ.はじめに

解説したい藤井風のすごいと思うところ(ざっくりです。もっとある。)

①グルーヴ感←今回はコレ

②自然体

 

グルーヴ…ノリみたいなもの。リズム感の一種。

 一定に刻まれているリズムへの音の乗せ方。早め(前め)にのる、遅め(後ろめ)にのることで生まれる波。

 何なんwのグルーヴが特にエグいのでこの曲を中心に例に用いて解説する。

 https://youtu.be/Nt6ZwuVzOS4

 この曲の基本は、多くの日本人がノリきれない16シャッフルビートが用いられている。

 全体的にキツめのシャッフルで進行するが、ドラム、ベース共に積極的に埋めておらず(前半1.3拍目の裏拍を抜いているドラム、ピアノも横軸の進行役として存在するものの最小単位が基本8分である)、ボーカルのグルーヴによって曲の印象が左右される構成になっている。

 今回は歌唱のグルーヴについてが焦点なので、何なんwという曲全体の凄さについての解説はまた別の機会に設ける。

 

 何なんwが自然と体を動かしてしまいたくなる曲に仕上がっているのは、ひとえに藤井風氏による歌唱が非常にグルーヴィーだからである。

 

藤井風歌唱のすごいところ(具体的に)

1.ゴーストノート

2.入りのタイミング

3.切り方のバリエーション

YouTube基準で秒数表示のため、サブスク等利用の場合数秒の誤差有り(Amazon musicは表示-5秒)

 

Ⅱ.藤井風のすごいと思うところ①グルーヴ感

 1.ゴーストノート

 ボーカルとして採譜される部分にない、歌詞のない聞き逃してしまいそうな小さな音がノリを生んでいる。

例)1:53-「そっちへいっては」の直前

  2:08-「先駆けて」の直前

                等

 ゴーストノートのタイミングは16シャッフルのシャッフル部分ジャストである。つまり、8分や4分のタイミングでもなく、16より細かいタイミングでもない。

 

 2.入りのタイミング

 これは、拍の迎え方と言うこともできる。

 そもそもリズム感は、音の①立ち上がり②切り のタイミングで示される。

 合奏などでは、バラバラになることを防ぐため、メトロノームなど一定に刻まれる拍と全く同時に音を出すことを目標とする。

 しかし主旋律を担う演奏者としては、拍に対してどのように音を乗せていくかという点は個性・センスが表れる部分であり、グルーヴが機械では表現し難い所以である。

 何なんwでは、歌詞の1音目から拍にぴったりでないタイミングで入っている。

 「あんたのその歯に〜」の最初「あ」の部分は、楽譜に起こすと恐らく3拍目の裏になるところを、それよりも早く下のエッジボイスから声を出し始め、気づいたら歌い始めているような状態。

 正直私はどのタイミングで声を出し始めているのか何回聞いても分からないし、分からないので真似しようもなく、あのグルーヴ感を再製する夢は1音目から砕かれてしまっている。

 それ以降も、特にAメロの語尾にかけて、拍に対し少し後ろ目に歌っており、脱力感を醸し出している。かと言ってずっと遅いわけではなく、恐らく「ため」やすい子音がフレーズの中で出てきた際、無意識に長めに発声している。(フレーズの頭で出てきた場合は長めにしないもしくは拍より前に出し、母音を拍と合わせることでリズム感を保ったままグルーヴ感及び脱力感を演出している)

 ためやすい子音…S、M、N、L

 〈フレーズ中ためている例〉

 1:20-「知らないほうが良かったなんて」の「な」

 1:46-「雨の中一人」の「り」

 〈フレーズ頭で前に出す例〉

 1:28-「何があってもずっと大好きなのに」の始め

 これはほんの一例で、特にBメロは「ため」のオンパレードなので、注意してみてほしい。

 また、Kはためづらい子音(母音との分離が難しい)だが、彼は曲が落ち着く部分でこの子音を効果的に長く使っており、そこにも感銘を受けている。この点と、Bメロにタメが多く発生している理由についてはまたそれぞれの曲解説をする際に触れたいと思う。

 

 3.切り方のバリエーション

 2冒頭にて、リズム感は音の①立ち上がり②切り のタイミングで示されると述べた。

 藤井風氏は切り方の引き出しも多く、自由自在に操っている。

 切るタイミングが見えない、減衰させて切る方法は、「優しさ」「帰ろう」などで見られる。(優しさでは以降紹介する切り方もあるため、バリエーションが豊富である。)

 

〈減衰させない切り方〉

 わしは言うたが…語尾に「っ」が入るような感じ。このように切ることで3拍目裏が休符にも関わらず明確に示されている。

(サビでは2で紹介した子音長めの入りが少なめになっており、拍とほぼ同時に入ることでバックの楽器との一体感が演出されている)

 

〈音を下ろす切り方〉1Aメロで紹介

 1:03-青さ粉に…割とすぐ下ろすが下ろしていることがわかる

   悩んでる…すぐ音が消えているが、声を止めておらず、恐らく音を(声と息の間くらいの声量になるタイミングで)下ろす形で切っている。息の方が声よりも後に残っている。

   大好きなのに…下ろす時間長め

   どんなときも…「も」の母音の時よりも口を開けて切っている。

 

〈音程変化無し、自然減衰〉

 3:53-

 

〈音程変化無し、息を押し出して切る〉

 3:53-「優しい気持ちで」

 

〈音程上げめに切る〉

 4:29-「何なん〜」フェイクの切り方

 

 下ろす切り方が多いのは、ゴーストノートを多様していることが関係しているのではないかと考える。

 音にならない音を、フレーズの初めに低い音で用いるゴーストノートは、直前のフレーズを切る際に低い音のところまで喉を持って行くと自然に出やすい。また単純にモチーフが駆け上がっていく形なので、ゴーストノート関係なく音を下ろして切ると繋がりが良くなる。歌い手が歌いやすいフレーズは、聞き手も聞きやすい。

 「帰ろう」では、〈下ろしてエッジボイスに変化させ、これを次のフレーズインのゴーストノートにする〉切り方をしている部分がある。

 https://youtu.be/goU1Ei8I8uk

 0:54-「何も持ってない〜それじゃ」〜の部分

 

 

Ⅲ.終わりに

 これまで紹介した点は、頭で理解したとしても自在に操れるものではなく、恐らく本人も、無意識、もしくはこのような表現をすると決めていたとしても具体的なタイミングについては本能にやっている部分が多いだろうと考える。

 つまり歌う度に異なった表現がされるアーティストなのだろうし、ライブとか全部飽きないんだろうな………最強かよ………