帰ろう/藤井風 の好きなところ
こんにちは!4連休で頭が狂ったパンパレ(米派)です。
前回は何なんwを例に用いて、藤井風のすごいと思うところ①〜グルーヴ〜を分析しました。
本来は、すごいと思うところ②〜自然体〜について書くべきところで、私もその予定でした。しかし先程「帰ろう」が大好きな原因に気づいてしまい、いてもたってもいられないので、今回は取り急ぎ「帰ろう」の好きなところを伝えたく発信します。
0.前置き
①好きなところ1〜サビの解放感〜
a.メロディ展開
b.リズム展開と楽器構成
c.MV
②好きなところ2〜メッセージ性と寄り添い〜
a.1番と2番のリズム変化と歌詞
b.メッセージ性
c.リアリティ
【0.前置き】
前記事にも書きましたが、専門に学んできた者ではなく、ただの音楽好きなだけのニワカなので、間違ったところがあっても知りません。以降語尾にすべて「知らんけど」がつくと思ってください。
また、今回歌詞の解釈について触れる部分が後半あります。歌詞解釈なんてすごく人それぞれなもので、決して藤井風さんがこう考えて書いたんだろうなと推し量るものではなく、私はこう受け取った!という話です。読んでくださる方は解釈が違っても「こう感じた人もいるんだな」と軽く流してください。
前置きが長くなりましたが、音楽の深部をパブリックに触れることはそれだけ危険性があるものだと考えているからです。その危険性を理解していても語らずにはいられないという深い愛をこの前置きから感じてください(?)
帰ろう/藤井風
「帰ろう」が私のツボにハマるポイントは次の2点です。
①サビの解放感が半端ないところ
②メッセージ性と寄り添い
まず①サビの解放感が半端なくなる原因を、a.メロディ展開 b.リズム展開 と楽器構成c.MVの3つの側面から考える。
a.メロディ展開
この点については、多くの人が初見で驚かされたことだろう。
Bメロは、16分音符を用いたリズミカルな1小節フレーズを、音程を下げていく展開。し降りきったところからそれまでのフレーズを短縮したような形で勢いよく滑らかに上昇し、E(ミ)の音に達した3拍目裏以降同音をキープしそのままサビに突入する。
その間コードはもちろんサビに向けて進行している。めっちゃここで胸キュッてなるんやけど。わかる?サビ直前の駆け上がるメロディに「どんなサビがくるんだ……」とドキドキワクワクしているところにまさかの音程キープでサビに突入…?!感涙
私は特にコード進行について浅学なので、サビ1小節前3拍目以降の3つのコードの効果について解説してくれる人を心待ちにしているが、Eをキープしたままサビに突入した結果サビ頭のボーカルが9thになってしまうところにaikoみを感じる。
b.リズム展開と楽器構成
イントロ…ピアノ。空間を大事にした音を詰め込まないフレーズ
1Aメロ前半…ピアノ+歌のみ
1Aメロ後半…ストリングス、シェイカーみたいなん入ってくる(8分刻み)
1Bメロ…シェイカー16分刻みになり、全体も8分刻みになる
1Bメロ終わり(サビ直前)…シェイカー消え、他楽器も刻みではなく大きい流れるフレーズになる
サビ…ストリングスによる大きいフレーズのオブリガート
リズムを刻むBメロとの対比によってゆったり感、解放感が増幅されている。
Bメロの刻みは、ピアノだけに任せるのではなくストリングスも刻むことで、弦楽器ならではの「打点の見えなさ」が刻みの印象を和らげている効果を感じる。一方でシェイカーは16分より更に細かい三連符を入れている所もあり、明らかにAメロやサビと差別化を図っている。
また、基本的なコードチェンジのタイミングが小節毎もしくは拍頭なのに対し、1Bの4小節目は、2拍目16分4つめで変えているところに「前のめり感」を感じて良い。
1:04- https://youtu.be/goU1Ei8I8uk
ちなみに、2番以降は安定してリズム隊が存在し、ベース・ドラムはもちろんピアノも前に押し進める構成になる。
1番と2番のリズム変化については、ただの曲展開ではなくメッセージ性があるものと私は捉えている。この点については後ほど②メッセージ性と寄り添い で述べていく。
c.MV
MVの素晴らしさについては、藤井風氏本人も動画で述べており、音楽以上に映像については素人なので、軽く触れるに留める。 https://youtu.be/36fhfRh_iVk
今までa.b.で述べてきた展開が映像によっても演出されている。
Bメロの刻むところで走り出し、更に時計の秒針も映すことで「刻み」の持つ意味が物理的に前に進むだけでなく、時間経過的にも前に進むという意味を持つことになる。
そしてサビ直前で刻みが消えるところでスローになり、サビ頭解放の瞬間で身を投げ出す藤井風………耳から感じてたイメージ完全にこんなんやった…………
私は先に曲だけを聞き、後からYouTubeでMVを観たがびっくりして口空いたし泣いた。聴覚だけで鳥肌立っていたものが視覚からも攻められて最強。
軽く触れるに留めるためにここで終わっときます。
②メッセージ性と寄り添い
a.1番と2番のリズム変化と歌詞
MVについて を挟んでしまったが、1番と2番リズム隊の存在感の変化について、歌詞から読み解いていく。
1番は『この傷は疼けど、この渇き癒えねど』などマイナスの言葉を用いながらそれを切り離そう、という内容になっている。「とりあえず暗い過去を振り払う」「憎んじゃいけない」という、ベクトルが後ろを向いている印象を受ける。
一方、リズム隊がしっかり押し進めていく2番には『ありがとう』『幸せ絶えぬ場所』というプラスの言葉が使われており、主人公(?)が過去と決別し前を向いて進むことが出来るようになったように捉えられる。
一番で強烈な解放感を植え付けた後、しっかり前へ推進力を持った展開にすることで、明るく元気な曲とは言い難い曲調ではあるが、悲しみに寄り添うような優しさの溢れた曲となっている。
b.メッセージ性
1番と2番サビ終わりにリフレインされるフレーズ『憎みあいの果てに何が生まれるの』というフレーズは、非常に抽象度とメッセージ性が強く、世界平和を願うような規模に捉えることもできるため、個人的にはこのままだと押し付けがましく感じてしまう。しかし直後に『私、私が先に忘れよう』と主人公(?)に矢印が向くことで、その抽象度を「自分の中にある憎しみ」に限定している。個人的に『私』を重ねているところが自分に言い聞かせているようなとても人間らしい機微を感じて好き!
c.リアリティ
そして最後『あぁ今日からどう生きてこう』という歌詞で締められる。
この歌詞について、YouTubeのコメントを流し見た限り解釈が分かれそうな点だと感じており、以降は私の感性によるもので様々な考えがあると理解した上で述べるのでご理解願います。
『あぁ今日からどう生きてこう』
この歌詞は、憎しみや背負ってきた荷物から解放されながらも心の底から喜べないような感情を覚えた。
憎しみのような負の感情は、強いエネルギーを持っており「復讐してやる」「見返してやる」といった原動力になる。この感情に操られて歩んできた人が、その原動力の憎しみを手放すこととした場合、次になにを目標として何のために生きればいいのか?途方にくれてしまうのではないかと思い、その時の呆然とするような感覚が歌に混ぜられているように感じた。
憎しみを捨てたとて幸せに生きられるわけはない、それでも先に私が忘れなければならないという苦しい感情も混ざった後味に仕上げるワンフレーズで、綺麗なところだけを凝縮した説教臭い曲ではないなぁ…と思った。(別に説教臭い特定の曲が浮かんでいるわけではありません)
ただ放心・絶望するのではなく「生きてこう」という 生きる ことが前提であることは忘れてはならず、本人が語る「生きることを諦めんで」という言葉を刻み、私は4連休明けの明日以降ももがいていきます。幸せに死ぬために。